執筆者・論考紹介
総合政策学の方法論的展開

分野横断型研究の方法論

篠原 舟吾

篠原 舟吾

総合政策学部 准教授

何を論じたのか

研究方法論には、「議論」「概念・測定」「分析」という3分類があり、「分析」にはさらに扱うデータの種類別に「質的手法」「量的手法」「混合手法」という3分類があります。完璧な方法論や分析手法は存在せず、それぞれが異なる強みと弱みを持ちます。本章は方法論の厳密性や複雑性をできる限り削り、まずJohn Gerringが提唱する社会科学における研究方法論の枠組みを概観します。そして、市民と行政の関係を分析した著者の論文を実例に、分野横断的な研究目的に沿ってどのように分析手法を選択し、多様な手法をどのように組み合わせることができるのか具体的に示します。

執筆者の研究紹介

行政や政策がどのように市民の行動・態度に影響を与えるのかというメカニズム、及び、市民が行政や政策を評価する際の潜在的バイアスを計量的に分析しています。人口減少が進む日本において、今後行政サービスの向上のためには、何らかの形で市民に政策決定や行政サービスの実施に携わってもらうことが不可欠になります。ところが、100以上の国と地域で実施されたWorld Values Survey 2010-14によれば、日本国民の行政への信頼度はOECD加盟国中最低レベルで、ギリシャ、チェコ、メキシコに次いで低いという結果が出ています。行政と市民の間に信頼関係が築かれず、市民の行政への関心・知識も低いまま、行政サービスが決定・実施されていくのであれば、国全体、特に直接行政サービスを提供する市町村にとって大きな損失です。市民へのアンケート調査からデータを取得し、行政を低く評価するメカニズムを分析することで、より生産的な市民と行政との関係構築に向けた議論が可能になると考えています。